第7章 烏の飛び方
「あの10番に付いて行ける奴は限られてると思うけどな」
「ですねー」
「犬岡君、大きいけどすばしっこいですもんね!」
「頭使ったプレーは全然駄目だけどな…が、ひとつの事を徹底してやらせれば、大いに力を発揮する」
犬岡君の指先が掠った翔陽君のスパイクは、夜久さんが綺麗に研磨の元に返した
「俺だって攻撃も負けないぜ!!」
「俺だってブロックも負けない!!」
そう言い合う二人を差し置き、研磨が選んだ攻撃はふわりとボールの浮く、ツーアタック
トンッと軽い音を鳴らして翔陽君の真後ろに落とした
流石の夕も対応しきれないようで、悔しそうに叫んでいた
研磨は少しでも力んでいたり、気を抜いている相手の隙をつくのが上手い
翔陽君は見てる感じ、すぐに力むタイプの選手だから研磨も狙いやすいんだろうなぁ
次のプレーで、なんとセッターの男の子がストレートを打って得点を決めた
見ている感じ、セッターは慣れてるから元WSとかではないだろうし……
「天性の才能…」
「はは、違いねぇ。だがそら、お前もあっち側の人間だぞ?」
シッシッシッと楽しそうに私をチラッと見ながら笑う監督にむす、と口を尖らせる
確かに私はどちらかというと天才肌の方であり、皆が出来ない事も数回やればできてしまったりしまう
だから、研磨がリエーフと合わせるのが難しいと言っていたりする気持ちが中々理解できないのだ
「でも孤爪さんだって派手じゃないけどすごいです!」
そう芝山君が憧れの眼差しで研磨を見ながらいうと、監督は研磨の得意な事について説明した
他人が苦手で他人の目を気にする彼は、他人に対しての予測が上手い
これは別に天才だったり秀才だったりするようなものではなく、ただ単に彼自身の性格と頭の回転の良さがかみ合った…という感じだろう
「でも、ウチの強さはそこがポイントじゃないけどな」
ニヤリと笑う猫又監督の目は、まさに獲物を狩る前の猫の目だった