第7章 烏の飛び方
「研磨調子いいね、このままいけば大丈夫だよ」
「…うん」
「福永、さっきからいいプレーしてるからブロック落ち着いて正面で跳んでみて、さっきより上手くいくと思うから」
「コクリ」
「夜久先輩に海先輩!ナイスサポートです!多分次から犬岡君が徐々に触るので、ボールが乱れやすいですが頑張ってください!」
「ありがとな」
「うん、わかった」
「犬岡君、絶対10番止められるから10番だけ追いなね。どシャットしなくてもいいから!」
「おス!あざッス!!」
「虎ー、あんた向こうの坊主に気迫負けてるよ?びびってんの?」
「んな訳ねぇだろ!見てろよ!!」
「クロ先輩はー…別にないです」
「なんでだよ流れで言えよ!!」
全員に声をかけながらボトルとタオルを回収していく
クロ先輩に任されている仕事の一つがこれ、全体の士気をあげる事だ
私は皆のように白線の内側に立つ事はできない
でも、皆と一緒に戦う事はできる
そのために私は、試合中いつもチームと相手の弱点・攻撃パターンをノートにメモしている
殴り書きで後から読むとひどくて読めない時もあるが、そんなのは関係ない
このノートが埋まれば埋まるほど、相手チームについて研究できているという事に繋がるからだ
私は、この戦い方で皆と戦っている
試合が始まり、すぐに翔陽君は動いた
しかし、対策済みの犬岡君が指先だけボールに掠る
研磨の言う通り、ブロックのいない所へ突っ込んでいるのがよくわかる…流石の一言に尽きる
まだブロックとまではいかない犬岡君は、悔しそうに叫んでいるがこのまま数本やれば当たるようになるだろう
そして、相手セッターは多分これを見てデディケートシフトの本当の意味を理解する
でも理解するだけじゃこれは突破できないだろう
デディケートシフトにしたお陰で、他のスパイカーが来るときのブロックがしやすくなる
だから翔陽君に回そうとすると、コースが絞られる
猫らしい、じわじわと相手を追い詰めるやり方だ