第7章 烏の飛び方
その後も、あの天才セッターと10番のセットの攻撃で点差が埋まらずにいた
そして、今10番が異様な速さの速攻を決めたところ
現在の得点、12対9
「あの10番、今のところ何点決めた?」
「12点中4点です。10番の囮のお陰で他の攻撃の決定率が高いですね…多分あれ囮の為の選手ですね」
「だがあれを囮と決めつけていては決められる…とんでもねぇな」
猫又監督はそう言って苦笑いすると、タイムアウトを取った
急いで芝山君と一緒にドリンクとタオルを渡す
「ありゃだめだ…あれはとんでもねぇバケモンだ…」
その言葉に、選手達は10番の事を指していると思ったようだがそのまま監督が否定する
「スパイカーの最高打点への最速のトス…針の穴に糸を通すコントロールだ…」
それだけではない、翔陽君が彼に絶対的信頼をおいて跳んでるからこそできる速攻なのだ。と監督は言う
「天才は仕方ねぇ…が、天才が一人混じった所でそれだけじゃ勝てやしないのさ」
そう言うと研磨をチラリと見る
研磨はコート内で一番動く事が少ない選手だ
さぼっている訳ではなく、冷静に相手を見ているから
だから、音駒の脳と言われるんだ
「翔陽が攻撃の軸なら…止めちゃえばいい……」
「翔陽?」
「あのすばしこい10番」
「縦横無尽に動かれて捕まえらんないなら、その範囲を狭くしちゃえばいいよ…そんで後はひたすら追っかける。犬岡」
「はいッス!」
「ウチで一番速いのお前だよね」
「あざッス!はいッス!!」
つまり、デディケートシフトにブロックを変えて犬岡に翔陽君をひたすらマークさせる作戦
これは確かに、犬岡君でもできそうなやり方だ
「最初はクリアできそうにないゲームでも繰り返すうちに慣れるんだよ」
そういう研磨の顔は、少し楽しそうだ
「あの9番と10番は言わば鬼とその金棒。まずは鬼から金棒を奪う」
そして
監督の話が終われば、私の出番だ