第7章 新しく私らしく
織江先輩がにこにこしている。手塚先輩は…ポーカーフェイスだけど、やっぱり織江先輩が一緒だと表情が柔らかく見える。
「こんにちは、夢子、すごく良いじゃない!」
織江先輩に言われるとやっぱり嬉しい。
えへへ、と照れると手塚先輩も、ふ、と笑って「ああ、似合っているな」と言ってくれた。
リョーマくんはずっと面白がるような表情をしている。
「朝から教室の空気が面白いんスよ、もう、オレ笑い出しそうで」
「もう、リョーマくんたら」
そういう私も、教室にいると笑い出しそうだからリョーマくんのことを言えない。
だって、皆の驚いた顔ったら。
ふわふわと広がる髪を縛ろうとヘアゴムをカバンから探すと、織江先輩が綺麗な包みを取り出し私に差し出した。
「あの…」
「これ、国光と私から、夢子に」
「ええ!?」
「夢子が、本当の自分になれたお祝い」
「そんな…なんだか申し訳ないです…。でも、すごく嬉しいです、ありがとうございます」
2人に頭を下げる。
「ね、開けてみて」
織江先輩の声にハイと頷き包みを開けると、大振りのバレッタだった。
蝶々のデザインだけど、色が黒と茶色なので、学校で付けられるものだった。
「素敵!付けてみます」
後手に髪飾りを付け、3人に背を向ける。
「ふふ、夢子、逆さまになってる」
先輩の手が私の髪に触れる。髪留めを直してくれて、これでよし、と肩を叩かれた。
リョーマくんに向き直り「にあう?」と小首を傾げた。
可愛い?、と聞けば良かったと思っていると、リョーマくんは顔を赤くして可愛い、と呟いた。
ふふ、と笑うとリョーマくんがああ〜…と情けない声を出した。
「オレ、彼女といる部長見て、あんなにデレデレしないと思ってたのに…」
手塚先輩が噴き出す。珍しい。
「越前お前な…」
織江先輩と私は顔を見合わせて笑った。
「今のところ、困ったことは無さそうだな」
「はい、大丈夫です」
手塚先輩に力強く頷くと、頭を撫でられた。