第7章 新しく私らしく
深呼吸をひとつ。
教室に踏み入ると誰?という顔でみんなが振り返った。
私は落ち着いて足を踏み出す。窓際の1番後ろの席でリョーマくんが微笑んで足を組んでいた。
私の王子様。
1番仲の良いクラスメイトに笑いかける。
「おはよう、今日は宿題やってきた?」
静かになってしまった教室で私の声は響いたけれど、気にしない。
ワンテンポ遅れて挨拶が返ってきて、ようやくホッとした。
「お、おはよう、夜野?びっくりしちゃった、イメチェン?全然違うじゃん!」
それを皮切りに皆各々の雑談に戻るのが分かった。
「えへへ、パーマかけちゃった、似合うかな?」
眼鏡の事には触れなかったけれど、クラスメイトはぶんぶん頷いてくれた。
「うん、すごく可愛いよ!似合う!」
「そっか、良かった、ありがとう」
にっこり笑うと普段話さないクラスメイトが寄ってきた。
「夜野さん…?どうしたの突然」
「パーマかけたんだけど、どうかな?」
また眼鏡には触れずに答える。
聞きたいのはそれじゃない、と言わんばかりの表情をしていたけど、にっこり笑って答えると、それ以上聞けないようだった。
今なら何でも出来る気がする。
担任が入ってきてHRを始める。
この後の授業でも同じだったけれど、先生はそれぞれ私を見ると、座席表を確認していてなんだか愉快な気持ちになった。
リョーマくんも今日は眠くなさそう、というか完全に周りの反応を面白がっている。
休憩時間毎に、代わる代わる「どうしたの?」と声をかけてくるクラスメイトに笑いかけて、パーマかけちゃった、と同じ回答をした。
お昼休みはスキップしないように教室から出た。
あ、小坂田さんと竜崎さんだ。
2人も私に気付いたようだった。
「あ〜〜〜!」
指をささないでください、小坂田さん。
「ちょっと、朋ちゃん、失礼だよ」
「だ、だって、え?青学だったのぉ?」
大きく驚く小坂田さんに、ぺこりと会釈をして、屋上へ向かった。
屋上への重い扉を開くと、冷たい風が頬を叩いた。
キョロキョロすると、隅の方で織江先輩と手塚先輩、リョーマくんがこちらに合図した。
手を振って近付く。
「こんにちは!」