第7章 新しく私らしく
それは突然で、私にとっては何の前触れもなかった。
ジュニアモデルは土日だけだったし、あまり大きな仕事はお母さんが避けてくれたからそれほど有名にならなかったし、何より休憩時間にクラスメイトとするドッジボールが楽しい普通の元気な女の子だった私は、ある日を境に突然学校中の女の子達の悪意に晒された。
学校に着くと上履きがなくて、たまたま登校中に友達と会わず、職員室へ向かい上履きがない旨を先生に話した。
先生は少し眉間にシワを寄せ、忘れちゃったのかしら?と言った。
「いいえ、昨日はありました」
「誰か間違えちゃったのかしらね、他のクラスにも確認するから、今日はスリッパを履きなさい」
「はい、分かりました」
先生の指示通り保護者用の大きなスリッパをずりずりと履いて教室へ入ると、クラスメイト達は一瞬だけ私へ視線をやり、また何もなかったかの様に話へ戻った。
クラスの雰囲気に負け、自分の席に荷物を置いて誰かに上履きの話をしようと視線を巡らすと、少し派手な可愛らしい顔立ちのクラスメイトが向かってきた。
「おはよう」
とりあえず挨拶をしてみる。
「あんたさぁ、顔が可愛いからって皆の事バカにしてたんでしょ?」
「え?」
挨拶もなく第一声が「あんたさぁ」なことに驚きながら、後の言葉に驚く。
「皆もう気付いたから、あんたと話したくないんだって。あたしだって嫌だけど、皆が言えないっていうから代わりに言ってんの。これは皆の意思だから、もう皆に話しかけないでね」
せっかく可愛いらしい顔をした彼女は、とても醜く歪んだ表情でそう言った。
何が起こったのか分からず、昨日を思い出す。
運動会の予行練習が半日あって、明後日の運動会のために皆でリレーのバトントスの練習をした。
隣のクラスと違ってうちのクラスは皆仲が良くて、男子も協力して、足の遅い女の子を、足が早い子の間にしたりして、順番のチェックをした。
思い当たらない、何もかもいつもの通りだった。
変わったことなんてなかった。
班で机を合わせてお昼ご飯を摂るのが基本だったけれど、誰も机を合わせてくれず、切り離されたパズルの様に、少し机が離され、その後は誰とも会話をしないで1日を過ごした。
長い長い1日だった。