第6章 最強の彼女
ラケットバッグを背負ったリョーマくんについて行くと、テニスコートにたどり着く。
お…お家の中にテニスコート…!
「すごい…ね…」
「そう?」
普通は家の敷地にテニスコートないからね。
「じゃあ、準備運動からね」
「ハイ」
体育の授業でしているような準備体操をした後、敷地の外側を5周した。
息が上がる。
「身体、あったまった?」
「うん、暑い」
「夢子って運動神経は?」
「うーん…悪くないつもりだけど、テニス部の人達見ちゃうと、本当に大した事ないと思う…」
「あれは比べるの間違ってるでしょ」
「そうかなぁ?」
「うん、まぁとりあえず悪くないなら大丈夫」
言われた通りにラケットを握り、素直に打ち返す。
授業の時よりもずっと綺麗にラリーが続いた。
楽しい。リョーマくんが打ちやすいところにボールを返してくれるので、思ったように打ててとても楽しかった。
「おー!帰ってたのか」
リョーマくんより低い、男の人の声に振り返ると黒の着物のおじさんが裸足で立っていた。
首を傾げる。
「あ、オヤジ」
「えっ!?」
慌てて顔をよく見ると目元がリョーマくんにそっくりだ。
勢い良く頭を下げ「初めましてっ」と叫ぶように挨拶をした。
「お?女の子?なんだ?彼女か?」
「うん、夜野 夢子。オレの彼女」
オレの彼女、という言葉に胸がときめく。
「あの、はい、そうなんです」
「すげー綺麗なコ捕まえたなぁ、リョーマ」
「まぁね」
リョーマくんが得意げに笑う。
「テニスやるのか?」
「いえ、体育で少しやっただけで、いま教えてもらってました」
「こいつ、教えたり出来んの?」
「はい、とても優しいですj
「へー」
「オヤジ、興味ないなら邪魔すんな」
「いや、混ぜてもらおーかと思って」
「あ、じゃあ私休憩します、どうぞ」
コートから出るとリョーマくんがため息を吐く。
「夢子、ボールから目離さないでね、危ないから」
「ん、分かった」
リョーマパパとリョーマくんのラリーが始まると、それはもう私としていたテニスなんて、本当に遊びだった事が分かった。
明らかに早い、見た事のない動き、ステップに息を飲む。
スポーツは観るよりする方が好きだと思っていたけど、ずっと観ていたいと思った。