第4章 続・恋人
織江先輩がにっと笑ってこちらを見た。
なるほど、勉強って言ってあったのか。
「ではな、お前らもまっすぐ帰れよ」
「はーい」「はーい」
手塚先輩の声に一緒に返事をして、顔を見合わせた。
昨日とは違い直ぐに右手を握られ、嬉しくなる。
「スキップしたい気分」
「する?」
「する?」
手を握り、3歩ほどスキップで進んだところで2人で噴き出す。笑いすぎてお腹痛い。
「だって、スキップとか、やばい、めっちゃ楽しい」
「オレ、も…笑いすぎてお腹痛い…」
ぜいぜい言いながら歩く。
箸が転がっても楽しい状態。
贅沢だなぁ。
「今日…うち寄ってく?」
「えっ」
「お母さんに紹介しようかな、とか、思ったり、して」
言ってからなんだか恥ずかしくなり、言葉が消え入りそうになる。
「行こうかな」
「えっ」
「えっ」
「だめなの?」
「ううん、行こうよ、紹介する。お母さん、美人だよ」
「知ってる」
「あ、そっか」
お母さんにメールを送り、帰っているかを確認する。
すぐに返信がきて、ジャージからルームウェアブランドのワンピースに着替えたわ!という文章をリョーマくんにも見せた。
「オレ部活帰りだけど、汗臭いかな」
立ち止まってリョーマくんの首筋に顔を寄せてみた。
あ、リョーマくんの匂いがする。
身体を離すと、もう何度目かの照れたリョーマくんの顔があった。
「臭くないよ、リョーマくんの匂いがした」
少しだけ乱暴に抱き寄せられる。
「夢子、その香水、反則」
耳元で囁かれくらくらした。好きすぎて、おかしくなりそう。
切なそうな表情を見て、黙ってキスをした。
私だけの王子様。
ずっと夢中でいたい。ずっと夢中にさせたい。
「大好き」
小さく呟くと、もう一度抱きしめられた。