第4章 続・恋人
「そういえば、そうだったね」
眼鏡、いつ外そうかな。
「誰にも見せたくないような、自慢して見せびらかしたいような、複雑な気持ち」
「見せびらかしたい?」
「そう、オレの初めての彼女だから。初めてこんなに好きになった人だから」
嬉しかったけど、一瞬でその言葉を深読みしてしまい、黙ってしまった。
だって、初めてってことは、2人目や3人目が出来るかもしれない。私達はまだ中学生だから、きっとたくさんの出会いがある。たくさんの出会いは、いつか別れを運んでくるかもしれない。
そう思うとあっという間に哀しくなってしまい、言葉が出なかった。
にこにこしていた私が急に黙ったから、リョーマくんが心配そうな顔になった。
「夢子…?」
リョーマくんの声に返事をしなきゃと思いつつも、顔が上げられない。何気なく言ったのかもしれないけれど、胸が痛かった。
「ごめん、オレ、何か悪いこと言った…?」
上手く言えない。
首を振り、笑顔をつくる。
「ううん、見せびらかしたいなんて、大袈裟だなぁ、リョーマくん」
今度はリョーマくんが黙ってしまった。目が合ったまま、気まずい時間が過ぎる。
「あのさぁ、夢子言ったよね?エスパーじゃないから、ちゃんと話そうって」
「…うん」
「いま、泣きそうな顔してる。全然笑えてない」
「えっ」
顔に手をやる。
「教えて、いま考えてたこと」
口に出したら、泣いてしまいそうだった。でも、伝えないまますれ違うのは嫌だった。
「…リョーマくんが、初めてって、言うか…ら…」
声が掠れて上手く出ない。
リョーマくんが立ち上がり隣に腰を下ろした。長椅子に境目はない。寄り添うように座り、肩に手を回された。
温かい。
「それで、初めてってことは、この先、2人目とか、3人目が出てきちゃうのかなって、別れちゃう日が来るのかなって、思ったら、哀しく…なって…」
だんだん恥ずかしくなってくる。だって、付き合って2日目で話すには重い気がしてきた。どうしよう。
恥ずかしくて俯くと、リョーマくんが肩を抱き寄せた。リョーマくんの方を向かせられ、ぎゅう、と抱き締められる。