第4章 続・恋人
今日も目覚ましより先に起きてしまった。
あと5分…と、呟いてから、やっぱりやーめた、と起き上がる。
先に着替えを済ませ、テレビを点けお弁当に取り掛かると、お天気お姉さんが『朝は少し雨が降りますが、お昼までには止むでしょう』と告げた。
テレビの音に起きだしてきたお母さんに、今日も作るから、寝てて良いよーと話しかけた。
ケータイを手に取り準備をしながらメッセージを送る。
『おはよう。今日って雨かな、朝練どうなるの?』
すぐに返信がきた。
『おはよ 朝練あるよ、雨降ってたら校内で筋トレ』
『OK☔️美味しいお弁当持っていくね!』
使い慣れない絵文字を使ったせいで、なんか変かも。
『早く会いたい』
短いメッセージにどきりとして、片手に持っていたケータイがすとんと落ちた。
ケータイはまっすぐ落ちて、足の甲に直撃した。
「ーっ」
痛みにしゃがみ込み、とりあえずケータイを拾うと、弾みに入力してしまったらしい「そ」という文字が送信されている。
あーあ。
画面を眺めていると『そ?』と返事がきた。
可笑しくてふふふ、と笑うとお母さんが起きてきた。
「おはよう、なんか楽しいことでもあったの?」
「おはようお母さん、ケータイ足に落として痛がってたとこだよ」
お母さんは訳がわからない、という顔をして椅子に掛けた。
「お母さん、私、彼氏できた」
「え…?」
お弁当を詰めながら告白すると、お母さんは目が覚めた顔で、むしろ青ざめてこちらを見た。
「あ、ごめん、いきなり。大丈夫だよ」
私とそっくりのお母さんの顔は、心配そうな表情で私を見つめる。
「ええと、おめでとう」
「ありがとう」
お弁当に蓋をかぶせ、おにぎりに取り掛かった。
今日は、おかかと梅と昆布と…ん〜…しらすにしよう!
「ええと、どんな子?」
「王子様」
に、と笑って答えると、お母さんが噴き出した。
「ちょっと、笑わせないでよ」
お母さんが少し怒ったように言う。
「本当だよ?テニス部の、うちの学校の王子様」
「イケメン?」
「まぁね」
でも、リョーマくんには王子様という名称がとてもぴったりくる。
「今度ちゃんと紹介するよ、お母さん明日は早い?」
「明日…うん、明日は7時には帰ってると思う」
「じゃあ明日、連れてくる」
「分かった、たのしみにしてる」