第4章 続・恋人
「なんか、星じゃないけど、…なんか、掴めそう」
「でしょ?なんか、星見ると、つい手を伸ばしちゃうんだよね」
「星、好き?」
「うん、夜空って好き。月も、星も好き。」
「そうなんだ、あんまり考えたことなかった」
一緒に見上げる夜空は、もっと好き、と小さく呟くと、リョーマくんが微笑んで「もう少し、こっち」と私を近くに座らせた。
リョーマくんの肩に頭を乗せると、肩から回された手が私の頭を撫でた。
鼓動が早くなる気がしたけど、暖かくて心が落ち着いた。
「ドキドキするけど、落ち着く」
感じたまま伝えると、オレも、とリョーマくんが呟くように答えた。
「夢子」
「うん?」
「好きだよ」
「うん、私もリョーマくんのこと、好き」
頭を抱く腕に力がこもる。
大人になりかけの私達は、熱を持て余して抱きしめ合う。
「どうしよう」
「えっ」
身体を少し離すとリョーマくんが困ったような顔をしていた。
「オレ、こんなに人を好きになるの、初めて」
「私もだよ…」
きっと私も困ったような顔をしている。
好きで好きで、仕方ないという顔。
再び、ぎゅ、と抱きしめられた。
「明日は?」
「明日は、部活のあと織江先輩とお買い物に行く」
「ふーん」
「朝は、またお弁当作っていくよ」
「うん」
胸がきゅ、となる。
抱きしめられた身体にリョーマくんの体温が伝わる。
「送ってく」
身体を離すと切なくなる。握られた手を握り返す。
私の家のアパートの前まで送ってくれたリョーマくんは、額にキスをして私から離れる。
「また、明日ね」
笑顔を作るけど、明日も会えるけど、寂しくてもどかしい。
「うん…」
リョーマくんがじっと私も見る。
「そんな顔しないで」
どんな顔だろう。自分の頰に触れてみる。
「さみしい顔してる。明日も会えるから、大丈夫」
抱き寄せられ、リョーマくんの腕の中に収まる。
大丈夫、という言葉は自分に言い聞かせるような言い方で、ああ、リョーマくんもさみしいって思ってくれてるんだ、とぼんやり思った。
「バスで帰るし、LINEして」
「うん」
ちゃんと帰ってくれないと安心出来ない、と言うリョーマくんに従い家に入り、窓を勢いよく開ける。
手を振るとリョーマくんが、ふ、と笑って手を軽く振った。