第1章 クラスメイト
自信作のハンバーグを箸で摘もうと視線を落とすと、制服のズボンに指定の学校履きが目に入った。
「え?」
思わず声を出して顔を上げるとそこには王子様があぐらをかいて鎮座していた。
「うわぁ」
もう一度間抜けな悲鳴を上げ私は後ろにのけぞった。ああ、なんて間抜け。
「Hi」
王子様は左手を上げネイティヴな発音で私に話しかけた。
「は…ハイ」
驚きを誤魔化せないまま挨拶を返す。
「なにしてんの?」
あ、いつから見ていたんでしょう。
「いや、少し考え事を」
「ふぅん。」
聞いてきた癖に興味なさげに返事をする王子様。
っていうか王子様だよ。やっぱりかっこいいよ。なんで屋上にいるの?なにしに?なんで私の前に?
たくさんのはてなが私の脳を占領する。
「アンタって、なんか面白いね」
「はぇ!?」
予想外の話題に声が裏返ったまま返事をしてしまった。しにたい。
「え、あの、面白いっていうのは、ええと、なんか話したっけ」
「ん、なんか面白い。」
ただ面白いと言われているだけなのに、私の顔はどんどん熱くなる。
「暑い?」
10月の末、風はさわやかで気持ちが良い。でもいまの私には足りない。
「あの、いや、少し、暑いかな?なに、どうしたの」
上ずった声でなんとか聞く。本当、なんでこんなところにいるの。
「天気良いから屋上で飯食おうと思って。」
王子様は淡々と答える。
うん、と答えながらお人形みたいな綺麗な顔に、やはり見惚れてしまう。
「なに?」
王子様は先ほど教室で見た、きょとんとした顔で小首を傾げる。
「あ、デジャヴ。」
「ん?」
あ、声に出てた。
「ほんとだ、俺もデジャヴ。」
ふっと笑ってパンの袋に手をかける王子様。
「あれ?お弁当は?」
さっきはお弁当を持っていたはず。
「食べた。足んないから、購買でパン買ってきた」
「そう、なんだ」
単なるクラスメイトだと思っていたのに、好きになってしまったせいで、上手く話せない。