第3章 昨日はクラスメイト
教室へ戻ると、今日も竜崎さんと小坂田さんがいた。
あの2人、時々だと思っていたけど、毎日来てたのか。知らなかった。
リョーマくんを見つけた2人の顔が明るくなる。
「リョーマくん!」
「リョーマさま!」
前を歩くリョーマくんの顔は見えない。
「なに?」
意識しないように教室に入る。昨日と重なる。
私って嫌な奴。
「あの、次の練習試合の場所、分かったから、また応援に行こうと思って」
可愛らしい声が聴こえてしまう。高くて女の子らしい、可愛い声…。
「ふーん」
「リョーマさまっ今回は私も行くよ!桜乃とお弁当作っていくからね!」
「ふーん」
「あの、リョーマくんは、お弁当のおかずとか、おにぎりの具で好きなもの…ある…?」
「オレ弁当は間に合ってるから」
被せるようなリョーマくんの返答に驚いて顔を上げると、クラスメイトと目が合った。
「あ!夜野!次当たるからノート見せて!」
「うん、いいよ」
ノートを広げると1人、また1人とクラスメイトが集まり、私のノートを移し始めた。
眼鏡をやめてしまったら、こんな穏やかな空気も少し変わってしまうだろう。
心ない言葉を投げ付けられるかもしれない。
記憶から声がする。
『整形なんじゃないの?』
ちがう。
「え?まじ?どこ違う?」
あ、声に出てた。
「ううん、違わない、ごめん」
笑って答える。
「良かった、うん、よし、おわった!本当助かった!ありがと」
「当たる時くらい予習しなよ」
「無理!1人でやると眠くなる!」
「テスト勉強出来ないじゃん」
「そうなんだよねー!」
軽口を叩いていると、リョーマくんが教室に入ってくるのを目の端で捕らえた。
ケータイが震える。
ちょっとごめんね、と一言かけてケータイを確認した。
『昨日もこの時間元気ないように見えた』
『本当?大したことじゃないんだけど、少しやきもちかな』
隠し事はしないと決めたから、素直に言ってしまおう。
『オレも夢子の先輩にやきもち妬いてるけど』
「笑ってるよ」
「えっ」
「口元がにぃ〜…ってなってた」
「う、恥ずかしい」
「彼氏でも出来た?」
「あー、いや、うーん」
「曖昧か!」
またケータイが震える。
『言ってもいいのに』
『まだ覚悟出来ないからだめ笑』