第3章 昨日はクラスメイト
「私も、やりたいです」
意気込む私に織江先輩が笑う。
「夢子、意外と尽くすタイプなのね」
「意外とか先輩に言われたくないです…」
桃子先輩があはは、と声をあげて笑った。
「学校で洗濯するなら、朝練後、昼休み、放課後、がOKで、持ち帰るのもOKだよ。王子様と相談してね」
「はい、分かりました」
「私の方でも夜野ちゃんが来ること、竜崎先生に話通しておくから、いつでもここに来て良いよ」
思わぬ待遇に驚きつつも、とても安心した。
少しでも長く、リョーマくんの近くにいられる事が嬉しくて、自然に笑みがこぼれる。
「ありがとうございます!がんばります!」
思わず出た大きな声に、自分でも驚いた。
「なにを?」
振り返ると走っていたはずのリョーマくんがいた。
「こら、勝手に休憩すると部長に怒られるよ!」
桃子先輩が笑いながら言う。
「いいっス、プラス2周くらい、全然するっス」
もう、と呆れた声を出す先輩。リョーマくんの背後には既に手塚先輩がいた。
「織江、さっき聞くのを忘れていたが、今日は帰りはどうするんだ?」
「うわ、部長!」
リョーマくんが驚いて振り向く。手塚先輩は微笑みを消し、なんだ、越前、と言った。口調も表情も、織江先輩に話すときとまるで違って、なんだか可笑しかった。
織江先輩が穏やかな声を出す。
「国光、今日は寄って行くわ、昨日話したじゃない」
手塚先輩は少し考える素振りをして、そうか、と呟いた。そしてリョーマくんに向かって「越前、あと5周追加だ」と言った。
リョーマくんが不満げにはーい、と言って走り出す。振り返り生徒会長に向かって叫ぶ。
「部長はあと何周ッスかー?」
「俺もプラス5周だ」
生徒会長は叫び返し、じゃあ、また、と言って走り出す。
生徒会長の返事に噴き出す。
桃子先輩は穏やかに「あの人、自分にも厳しいのよ」と言った。
リョーマくんは「ウィース」と満足げに言って、また走り出す。
仲の良い部活なんだなぁ。
心を読んだように桃子先輩が言った。
「仲良しでしょ」
「はい、とっても」
素直に頷くと、桃子先輩は本当に嬉しそうに、にっこりと笑った。