第3章 昨日はクラスメイト
「あの、先輩?」
「…ありがとう、越前くんが夜野ちゃんを好きになってくれて良かった。」
心強い気持ちになる。
「私も、越前くんを好きになって良かったなって、思います。桃子先輩と知り合えたし」
身体を離すと桃子先輩が嬉しそうな顔をしていて、私も嬉しくなった。
「あ、そうだ、今日織江も来てるよ」
「あれ、お知り合い だったんですか?」
「知り合いどころか親友だよぉ!部活一緒なんでしょ?」
2人の雰囲気が正反対だから、とても意外だった。
「はい、織江先輩は、憧れなんです」
「ああ、ちょっと似てるよね」
リョーマくんにも今日そう言われたなぁ。
「やっぱり、部長の彼女って言うのも大変なんでしょうか…」
桃子先輩がきょとんとした。そして笑う。笑う。爆笑している。
「あは、あはは」
息も絶え絶えという感じに笑うと、ごめんごめん、と言ってから、
「織江は初めから最強だったよ」と言った。
最強、という表現がなんだか可笑しくてつられて笑う。
「あの子、美人でしょ?1年の時から、結構有名だったの。」
初めて聞く先輩の話になんだかドキっとした。
「でも織江、今よりずっとツンツンしてて、友達も作らずにいつも1人でいたんだよ」
あの穏やかな先輩がツンツンしていたなんて、なんだか想像出来ず首を傾げる。
「まぁ、あんまり面白い話じゃないから、織江と仲良くなった頃のことは、また今度ね」
ああ、やっぱり2人とも大変だったんだろう。
小学生の頃とは違う。少しの差なのに、私たちはどんどん女になっていく。
「そういえば、夜野ちゃんはテニスやるの?」
「いえ、体育の授業で少しやったくらいです」
「そうなんだ、今度一緒打とうよ、教えてあげる」
織江先輩がいるという部室横のベンチまで、桃子先輩と歩きながら、他のレギュラーの先輩の話を聞いた。
話す先輩はとてもたのしそうで、テニス部が大好きなんだということが伝わってきた。