第3章 昨日はクラスメイト
放課後が近付くだけでわくわくしてしまう。
そういえば先輩の彼氏は生徒会長だったのか。詮索したら悪いと思ってちゃんと質問したことがなかったから、今日は驚いた。
柔らかな表情で2人して本を覗き込む様子は、本当に綺麗で絵の様だった。
織江先輩は常々大人っぽいと思っていたけれど、生徒会長は本当に大人に見えた。私たち中学生にとって、1年や2年の差は大きい。
身長だって、これから伸びるわけだし。
ホームルームを聞き流し、待ち侘びた放課後に出会う。
前の席の堀尾くんは勢いよく立ち上がり「部活行こーぜ!越前!」とリョーマくんに話しかけている。
今朝は練習が終わる頃に覗いたから、間近でリョーマくんのテニスを見るのは初めてだ。
今朝の女の子たちを思い出すと少し抵抗があるけれど、それよりもリョーマくんの近くにいたかった。
よし、と意気込んで立ち上がると、カバンの中のケータイが震えた。
『またあとで』
顔を上げるとリョーマくんがケータイを手にこちらを見ていた。
ケータイに視線を戻し、急いで返信する。
『リョーマくんがテニスするところ、間近で観るの初めてだから、すごく楽しみ』
送信するとリョーマくんがケータイを見る。
にやけていますよ、王子様。
「なんだよー、聞いてんのかよ越前ー」
堀尾くんがリョーマくんを揺さぶる。
「…聞いてなかった」
悪びれず答える様子が可笑しくて、ふふっと笑うとリョーマくんが近付いた。
私の肩にポンと触れて「じゃあね!夜野」と教室を出て行く。
「うん、またね」
「おー、夜野また明日なー」
「うんまた」
明日ではないけど。