第2章 ただのクラスメイト
「あの、越前くん」
「ん?」
ハンバーグを口に入れるところで話しかけられた。
沈黙…。
「なんて言おうか忘れた…」
「そう」
弁当は文句なしに美味しかった。
「夜野」
「あっはいっ」
「うまかった。ごちそうさま」
「良かった。おそまつさまでした」
ぺこりと礼をし合う。
ぷしゅ、と音を立てファンタを開けると夜野が「かっこいい…」と呟いた
「えっ?」
ファンタを開けただけでかっこいいと言われたのは、初めてだった。
あまりの唐突さに顔が熱くなるのを感じた。なんだよそれ、突然過ぎる。
やばい。これは見られたくない。視線を落とした。
「越前くん…?」
「あ、ありがと」
とりあえずお礼を言ってみる。
「あれ?越前くん照れてる?」
「うるさいよ」
少し睨むように見ると、夜野は固まった。眼鏡の奥はあまり見えないけど、こっちをみてじっとしている。
「なに」
「いや、なんか、綺麗で」
「綺麗?」
眼鏡の下の素顔は美人なのに、男の俺に向かって綺麗とか、何言ってんだろ。
「アンタの方が、綺麗だと思うけど」
眼鏡を取り上げると「あ」と小さく言って、大きなアーモンド型の綺麗な目がこちらを見てから、ばっと俯いた。顔が赤い。
入学式に校舎裏で写真を撮っていた変わった親子。
写真を撮り終えるとサッと眼鏡をかけていたけど、やっぱり美人だ。
「すげー綺麗だよね」
感想を述べるとまた顔が赤くなった。鼻筋の通った整った顔立ち。目と眉の距離は近くて、目の大きさが際立っていた。人形みたいだ。
取り上げた夜野の眼鏡をかけてみる。表よりはよく見える。
「これ、男避け?度、入ってないよね?」
眼鏡をかけた俺を見て、夜野はふふっと声をあげた。
長い睫毛が少し震えている。綺麗だなぁ。
空とか虹とか、景色が綺麗なのと同じように。
なんだか綺麗に見えた。