第2章 ただのクラスメイト
きつい陽射しの夏が過ぎて、秋風が心地良かった。
屋上最高。
パンを頬張り夜野の弁当を見る。
「ほえ、いうんえううっえんお?」
「ん?」
言えなかった。パンを飲み込む。
「それ、自分で作ってんの?」
「ああ、うん、そうだよ。お母さんと日替わりで。今日は自分で作ったやつ」
なんとなく視線が合わないまま夜野はおかずをつついていた。タコのウインナーが食べて!と言わんばかりにこちらを見ているようだった。
「へぇ、器用だね」
素直に感想を言うと、夜野は顔も上げないまま「そう…かな、ありがとう」と言った。
あー、もしかしてさっきのこと怒ってる?
つつかれたタコさんウインナーがぷるぷると身を揺らす。
「それ」
「え?」
「それ、食べないの?」
「あ、いや、ええと、急に食欲なくなっちゃって」
「ふーん?食べないなら、チョーダイ」
「えっ」
「よく驚くね」
そのままタコさんウインナーに手を伸ばし、口へ放り込んだ。
「もーらいっ」
あ、ウインナー美味いな。卵焼きも美味そう。
「卵焼き」
「えっ」
「卵焼きも食べていい?」
やっぱ運動量多いかな。明日から弁当増やしてもらうか。桃先輩みたいになっちゃうけど。
「どうぞ」
夜野は控えめに弁当を差し出す。
「ハシ、借りていい?」
「あ、うん」
綺麗に巻かれた卵焼きに口を運ぶ。しっとりと甘く、ダシの味がした。
「あ、甘いやつだ。」
「ごめん、甘い卵焼き嫌いだった?」
「いや、すげー好き。甘い方が好き」
美味いじゃん。2つ目も口へ。
「それは、良かった…わ、私も甘い方が好きなんだ」
「へぇ」
まぁ、好きだから自分で作ったんだろうな。少し俯いて黙る夜野。
「もう食べないの?」
「うん、胸がいっぱいで」
「ふーん。じゃあ食べちゃっていいの?」
「えと、それで良ければ、どうぞ」
「いただきます」
手を合わせると夜野が「ふふっ」と声を出して笑った。
どうしたのかと夜野を見ると、顔を上げて
「どうぞ召し上がれ、食べかけですけど」
といった。
うん、と短く返事をして弁当を食べた。