第2章 ただのクラスメイト
弁当を食べ終わり、ファンタでも買おうと腰を上げると夜野はいなかった。
そういえば昼はあんまり教室で見かけないような。まあ、どうでも良いか。
ファンタを買って、ついでにパンを買う。最近運動量が多いせいか、やたら腹が減る。教室に戻ろうかと思ったが、天気が良いのを思い出し屋上に上がることにした。
屋上は、カップルやお一人様がぽつりぽつりと隅に陣取っていた。
夜野がいた。本を読んでいる。
見ていると本を置き、ため息をついて箸に手を伸ばす。ひざの上に弁当。うわ、うまそう。
目の前まで行ってあぐらをかいて座り、ファンタをこん、と音を立てて置いた。まだ気付かない。
夜野はぼんやりした視線を弁当に移すと、やっとオレに気付いたようだった。
「え?」
と声をあげてもう一度「うわぁ」と言いながらのけ反った。よく驚く奴だな。
「Hi」と片手を挙げると「は…ハイ」と返事をした。
「なにしてんの?」
「いや、少し考え事を」
「ふぅん。」
まあ、そんな顔してたしな。
「アンタって、なんか面白いね」
「はぇ!?」
裏返った声で驚く夜野。こんな奴だっけ?
そういえば性格とかもよく知らない。クラスで、眼鏡ちゃん、と呼ばれて「いや、それ物質名だから!」とツッコミを入れていたのを思い出す。
「え、あの、面白いっていうのは、ええと、なんか話したっけ」
「ん、なんか面白い。」
だって、物質名だからって普通言うか?思い出し笑いしそうになって堪える。
何に照れたのか夜野の顔が赤くなる。
「暑い?」
晴れた10月末の昼間。日向とはいえ暑くはない。
「あの、いや、少し、暑いかな?なに、どうしたの」
上ずった声が可愛らしかった。緊張してる?
「天気良いから屋上で飯食おうと思って。」
返答したが夜野はぼんやりした顔で俺を見る。
「なに?」
「あ、デジャヴ。」
「ん?」
ああ、さっきもこんな感じだったな。
「ほんとだ、俺もデジャヴ。」
言いながらパンを開けると「あれ?お弁当は?」と聞かれた。
「食べた。足んないから、購買でパン買ってきた」
「そう、なんだ」
なんかいつもと違うような、でもあんまり知らないし。
こんなに大人しい奴だっけ。