第2章 ただのクラスメイト
授業はつまらない。興味もない。
天気は良い。
早くテニスがしたいと思いながら、うとうと窓の外を眺めた。眠るとさすがにまずいので、時折黒板の方を見やる。
授業は耳に入ってこない。
ふと視線を感じて右側を向くと、クラスメイトの夜野がこちらを見ていた。眼鏡ごしに目が合う。なんであんなに反射してるんだあの眼鏡。
器用にペンをくるくると回していた。
何か用かと思い、声に出さずに『なに?』と口を動かした。
その瞬間夜野はペンを落とした。あーあ。
先生がペンを拾い、
「落とさないように練習しておけよ」
と言い、クラスがそれに少し沸く。
眼鏡を掛けていてもそれと分かる赤い顔をして夜野が俯向く。
夜野がこっちを見た。俺もくるりとペンを回してみた。案外簡単じゃん。
『まだまだだね』口パクで言うと、赤い顔が更に赤くなった。耳まで真っ赤。
そんなに恥ずかしかったんだろうか。
昼休み、何か用があったのかと思い、再びペンをくるくる回しながらぼんやりする夜野を見た。
立ち上がり傍まで行く。器用に指が動きペンはくるくると回っていた。
「ふーん、やるじゃん」
話しかけると夜野はびくりと小さく「わ」と言ってしてペンを放り投げた。
あ。
堀尾に直撃。
「いってー!!なに?なんだ?」
慌てて立ち上がりペンを拾う夜野。
「ごめん、堀尾くん。私、またペン飛ばしちゃって…」
おろおろしている夜野は気の弱い犬みたいだった。
「なんだー。ペンか。良かったー!また越前の奴が何か投げてきたのかと思ったぜ」
またって何だ。人聞きの悪い。
「俺は何もしてないケド?」
「げっ越前いたのかよ」
「いちゃ悪い?」
「いや、そういえば最近見学に来る女子、結構可愛い子いるの見たか?」
「どーでもいい」
「ちぇっ、どーせ越前は何もしなくてもモテるからいいよな」
「興味ない」
「そうかよっ」
拗ねる堀尾。その眉間、なんで繋がってんの?触ってみたい。
堀尾が教室を出て行くのを見送ると夜野がまだぼんやりと突っ立っていた。
「いつまで突っ立ってんの?」
夜野は恥ずかしそうに、でも少しむっとした表情で席に戻った。
俺も腹減ったな。弁当食べよ。