第1章 クラスメイト
「眼鏡、外したら?」
「あ、はい。」
素直に眼鏡を置く。
「それで、私、顔を好きなったのか聞いちゃったんです、顔が理由なら、やっぱり抵抗あって」
「うん」
「でも、越前くん、私のお弁当からつまみぐいして、料理上手な私が好きだって言うんです。私だって授業中、越前くんの顔に見惚れてたのに、越前くん、気を使ったのか、言葉を選んでるみたいだったけど、あ、そうそう、私それ聞いて少し泣いちゃって」
そこまでまくし立てたところでむせてしまい、げほげほと咳き込んだ。
「大丈夫?なんか、だいたいは分かったけど、恋したその日に両想いになっちゃったってこと?」
咳を抑え込み答える。
「や、やっぱり、そうなんでしょうか?」
「それは本人にしか分からないわ」
にっこりする先輩。ですよね。
「でも、聞いた限りと、さっき見かけた王子様を見ると、そうなんじゃない?」
「さっき?」
「迎えに来てたじゃない」
「ああ、いや、あれは偶然だと思います」
「そうかしら?」
織江先輩が意味深に笑う。
そうですよ、と言いかけたが越前くんが扉の前でこちらを向いていたことを思い出すと、迎えに来てくれていたのかもしれない。
「好きなの?」
先輩はいつも声のトーンを変えずに話す。驚く様な話題にも、あまり感嘆詞を出さない。
ゆっくりと、あら、とか、まぁ、とか言うくらい。
「好き、だと思いますけど、まだあんまり性格とか知らないので、本当に好きなのか自分でも、疑わしいというか…」
「初めはそんなものよ」
編棒を持ち替えて先輩が笑う。
「先輩も初めは顔でしたか?」
「そうねぇ、私は、清潔感のある人が好きだから、顔とは少し違うかしら…」
器用に編まれていくセーター未満のそれはゆっくりと面積が広くなっていく。
「夢子、前にも言ったけど、やっぱり見た目も貴方の一部なんだから、そろそろ受け入れたら?」
「そのことなんですけど、織江先輩くらい髪が伸びたら私もパーマかけて、眼鏡外そうかなって思ってるんです。」
「あら、とってもいいじゃない」
「真似しても、いいですか?」
「もちろん。あ、美容院の紹介状あげる。この前かけ直したから、もらったの」
「先輩みたいなパーマかけてくださいって言ったら通じますかね?」
「そうね、きっと通じると思う。」