第1章 クラスメイト
手際良く本を収めていく。
上の棚も終わり、椅子から降りると越前くんが私を見た。
「なに?」
越前くんは黙って私を見る。恥ずかしいんですけど。
「そのメガネ」
「ん」
「なんであんまり目が見えないの?」
「ああ、少し、ミラーコートしてあるの」
「へぇ」
興味深そうにメガネを覗き込む越前くん。そちらからはあまり見えませんが、こちらからは普通に見えるのです。恥ずかしい…。
「ポニー」
「ぽにー?」
「ポニーテール、かわいい」
突然言われ、二の句が告げなくなる。
越前くんが近付いてまた私の眼鏡を外す。
「俺、ポニーテールって好き」
「あ、そうなんだ」
ようやく声を出したが少し上ずる。
「眼鏡、ちゃんとかけといて」
越前くんが真面目な顔をして眼鏡を差し出す。
自分で取ったくせに。
でもそんなこと、言えない。
「うん」
大人しく返事をして眼鏡をかけ直す。
作業に戻る越前くんの、少し跳ねた黒髪が綺麗で触れたいと思った。
好きって、触れたいってことなのかな。