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【テニスの王子様】私の王子様【越前リョーマ夢】

第1章 クラスメイト



図書整理は大変地道な作業だ。

あるべき場所に本を戻すだけ。

返却された本を戻し、返却されていない本をチェックし、催促のプリントを作る。

ハーフアップにしていた髪をポニーテールに結び直す。早く終わらせて先輩に話しを聞いてもらおう。

奥から確認するため、持てるだけ本を抱え本棚を曲がると越前くんが立っていた。

「なにしてるの…」

「夜野さがしてた」

なんで…

「これ、どこ仕舞うやつ?」

「棚の番号、本に貼ってないかな」

たくさん抱えた本の向こう側に、少しだけ越前くんの頭が見える。

「ごめん、奥に進みたいから、ちょっと、どいて…」

重いので早く奥の本棚に行きたい。よいしょ、と持ち直すと急に軽くなって本を落としそうになった。

「ひゃあ」

間抜けな声が出る。

「半分持つよ」

「あ、ありがとう」

図書委員なのは越前くんなのに、なんだか手伝ってもらったような気がしてしまった。

好き補正恐るべし。

「この本棚からやっちゃおう」

振り返るとさっき手にした本を、越前くんが食い入るように読んでいた。

『僕は勉強が出来ない』

山田詠美の傑作だ。

「越前くん、勉強出来るじゃん」

「アンタよりはできない」

「そうかもね」

越前くんはやらないだけって感じ。授業中も興味なさそうだし。

「それ、借りたら?ゆっくりあとで読みなよ」

「うん…」

読み進めると続きが気になる気持ちも分かるけど、早く部活に行きたかった。越前くんは違うのかな?

「越前くんも、部活あるんだから、早くやっちゃおうよ」

部活、という言葉に反応したのか越前くんがハッと顔を上げた。

「そうだった、早く終わらせよう」

立ち上がりようやく手伝ってくれる。

位置を確かめ本を収めていく。この作業自体は結構好きだ。綺麗に整った本棚はとても見ごたえがある。

越前くんが本を運んでくれる速度に遅れないよう、本棚に仕舞っていく。

後期は図書委員にしようかな。でも、そうなるとますます図書室に入り浸ってしまいそう。


手が届かなくなり椅子の上に立った。

よいしょ。あ、ぐらつく。

「おい、危ないよ」

越前くんが駆け寄り椅子を支えてくれた。

「ありがと」

嬉しくて、笑って答えると、越前くんの顔が少し赤くなった。どこまで信じて良いのかな。きっと、今日分かるよね。
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