第14章 テニスと王子様
「まぁね、なんか賭けた方が面白いじゃん」
「そうかなぁ?」
「いま思いつかないから、貸しにしておく」
「ん、分かった」
伸ばされた手に身を固くすると髪にふわりと触れられた。
「リョーマくんは、私の髪、好き?」
「うん」
「もともと?」
「いや?考えたことなかったな」
リョーマくんの指先が私の髪の毛先をくるくると遊ぶ。
「あ~寒かった」
ぱたぱたと上品な足音とともにリョーマくんの従妹のお姉さん、菜奈子さんが顔を出した。
「あら、リョーマさん、夢子さん、ただいま」
「おかえりなさい」
まっすぐ伸びたロングヘア。
こんなに綺麗な人が身内にいるのに、恋愛に興味がなかったなんて、なんだか信じられない。
廊下の奥に消えていった菜奈子さんの後姿をぼんやり見ていると、髪をそっと引かれた。
「ん」
唇が重なると胸がきゅ、となる。
いつの間にか詰まった距離に体温を感じる。
髪に触れられていた手が頬に降りてくる。
熱い。
「はぁ」
息を吸い込むと唇が離れた。
ボーっとする脳みそを揺さぶるように、視覚がリョーマくんを捉える。
ああ、どうしたらこの気持ちを好き以外の言葉で伝えられるのかな。
もっと、たくさん考えてるのに、うまく言葉に出来ない。
「…好き」
「うん、俺も」
ふわりと微笑むリョーマくんは綺麗で、やっぱり視線を奪われる。
「ほんと、なんでだろ」
リョーマくんの呟きに首を傾げると抱きしめられた。
「かわいすぎ」