第14章 テニスと王子様
本気で重いのかも。
「あの、「動かないで」
「いや、歩ける、から、重いし…下ろし」
「だめ。動かないでって言ってるじゃん。てゆーか、動かれると重いから、じっとしてて」
お姫様抱っこのままで庭の水道まで運ばれ、傷をじゃぶじゃぶ洗われた。
そして縁側まで運ばれ、投げ出した膝を消毒液が伝う。
「ううああああああしみるぅぅ~~~~」
脚を動かさないように悶絶していると、リョーマパパが通りかかった。
「おう、夢子ちゃん、派手にやったなぁ」
「あ、お邪魔してますああああああああああ」
慌てて顔を上げたところでリョーマくんが傷口の消毒液を、ティッシュで丁寧とは言えない手付きで拭った。
「ははは、まだまだだな。うちで飯食ってけよ」
「はい、ありがとうございます」
リョーマパパの背中を見送ると、ガーゼの付いた大きな絆創膏を貼られ、それをぺしっと叩かれた。
「いたっ」
「無茶しすぎ」
「…でも、もうちょっとだったもん」
上目遣いにリョーマくんを睨むとリョーマくんが目を逸らした。
「か…」
「か?」
「かわいいから、その顔禁止」
赤くなった頬に少し怒ったような顔。何回見ても普段とのギャップにかわいいと思ってしまう。
わざとそのまま覗き込むと、リョーマくんが急にこっちを向いてキスをした。
「!!」
驚いて見ると、少し意地悪そうな瞳が私を見ていた。無愛想な、綺麗な顔の、ツリ目の王子様。
「そうだ、何してほしいの?」
さっきの勝負は私の負けだから、1つ言うことを聞かなくてはいけない。
リョーマくんが腕を組んで視線を上に向けた。
「うーん…」
「思いつかないのにそんな提案したの?」