第14章 テニスと王子様
「あ〜〜〜〜〜!」
叫ぶも虚しくラケットは空を切り、ボールはラケットの先をすり抜けて行った。
「あ〜!!!!」
そのまま私はバランスを崩し、前のめりにすっ転んだ。
「いてて…」
摩擦に負けた膝は擦りむいて、とても小さな砂利を少し巻き込み血で汚れていた。
「うわ、グロ…」
呟いて身体を起こすと、さっきまでネットの向こうにいたリョーマくんが私を見下ろしていた。
「ひゃあ」
驚いて仰け反ると、リョーマくんが私の手を引いた。
「何してんの」
困ったような顔。
しゃがみこんで私の膝を確認すると「うわ、グロ」と私と全く同じ感想を述べた。
それが可笑しくて、笑いそうになる。
「なににやにやしてんの」
「え、いや、なんでもない」
にやけてたか。
「立てる?」
手を引かれよろよろと腰を上げると、リョーマくんはそのままひょいと私をお姫様抱っこしてしまった。
「うわっ、あぁぁ」
リョーマくんの顔が近い。
「うるさい、耳元で騒がないで」
「…はい」
だって、身長はそんなに変わらないのに、リョーマくん、軽々私を抱えてる。
重いと思ってるの、隠してる?
表情を確認しようと顔を見つめてみたけど、無表情で、よく分からなかった。