第13章 桜の精?
キスをやめて身体をぎゅうと抱きしめる。
暖かくて、くすぐったくて、安心するのに抱きしめるほど胸が締め付けられた。
「リョーマ、くん」
ハッとして身体を離した。
「ごめん、苦しかった?」
「ううん、大丈夫」
ふわりと笑う夢子に見惚れる。
「またそんな甘ったるい顔して、ずるい」
クスリと笑いながらそんなことを言う夢子だって、教室では絶対に見られない緩んだ顔をしている。
「どっちが」
ほっぺたをむに、と引っ張る。
「あにふんおう(なにすんのよう」
「はは、変な顔」
「うう〜〜…」
ほっぺを摘まれて変形した顔すら可愛い。
オレのお姫様。
「あ、リョーマくん」
頬を離すとそこをさすってから、カバンをゴソゴソと探る。
「ん?」
「じゃーん」
誇らしげな顔に、差し出された包み。
「ああっさっき慌てたからぐしゃってなってる」
慌ててしゃがみ込み包みのシワを伸ばしている。
「くれんの?」
上から覗き込むと、夢子がパッと上を向いた。上目遣いに見つめられ思わず言葉に詰まる。
「えっと、これ」
そのままおずおずと差し出された、皺の寄った包みを受け取った。
「あけていいの?」
「えと、うん」
照れているのかひたすら下を向いている。
簡単に包まれたそれを開けると、マフラー…?じゃない、この前のマフラーと同じ手触り。
広げるとカーディガンだった。
「おお」
「えっと、ちょっとマフラーで調子に乗って作っちゃったんだけど…なんか、手編みとかちょっと重かったかなとか、思ったr」
しゃがみ込んだままの夢子を引っ張り上げまた抱きしめた。
「なんなんだよ…」
「えっ」
「夢子、これ以上好きにさせて、どーすんの…」
嬉しいような、恥ずかしいような、よく分からない感情がまた渦巻く。
「えっと、喜んで、くれたってことで、良いのかな」
身長があまり変わらない夢子を抱きしめたままだから、顔は見えない。戸惑う声に少し笑ってしまう。
「当然」
「…そっか、良かったぁ」
「着てみて良い?」
「え、いま?」
「うん、ちょっとこれ持って」
身体を離しラケットバッグを降ろし、学ランを手渡した。
夢子が学ランにを顔を埋める。
「何やってんの」