第13章 桜の精?
「できたぁぁあ」
思わず声をあげてしまい、ハッとしたけど今日は部室には私しかいないので、安心してもう一度「やったー」と、声を出した。
出来上がったカーディガンはなかなかの出来で、マフラーで慣れたからか編み目も揃っていてぱっと見手編みには見えない。
ふふふ、こみ上げる喜びに笑っていると、ガラッと音を立てて勢い良く扉が開いた。
「えっ」
「あっ」
この前の三年生さん達だ。
「何か?」
ノックもなしに開いた扉に驚きながらも出来るだけ冷たく聞いてみた。織江先輩の真似だ。
3人はまたおどおどしているけれど、私しかいないのを認めると少し余裕が出来たのか「織江さん、いませんか」と言った。
見れば分かると思うけど。
「今日はいません」
立ち上がって扉の前まで行くと、先輩達は私を睨んでいた。
「あなた、越前くんの彼女でしょ?」
情報早いですね。
「そうです」
「乱暴だって噂流れてるわよ」
「そうでしょうね」
少し沈黙…
「私、織江先輩と違って短気なので、すぐに手が出ちゃうんです…」
ふぅ、とため息まじりに目を見て話すと、先輩達が後ずさった。
「最低ね」
「そうですね」
また沈黙。何しにきたんだこの人たち。
「早く越前くんと別れてあげなよ。越前くんの評判が下がったら可哀想」
「ふーん、なんで下がるの?」
聞き覚えのある声にハッとすると、三年生さん達が青ざめていた。
「…越前くん、この子、私達に暴力振るおうとしたのよ!?付き合うの、やめた方が良いよ」
「ふーん、ていうか、アンタ達、誰?」
ふっ
思わず吹き出してしまい先輩達が私をにらんだ。だって、リョーマくんて、本当に誰にでもあんな態度なんだ。
「別に、アンタみたいな人達にどう思われても、オレはどうでもいいけど?」
聞こえる声に早く顔が見たくなって、先輩達を押し退けて廊下に出た。
「リョーマくん、もう部活終わったの?」
リョーマくんが笑う。
「うん、ちょっと早く終わった」
かっこいいなぁ、もう。
「ちょっと、無視してんじゃないわよ」
肩を掴まれ振り返ると、先輩達が嫌そうな顔をした。
にっこり笑って「私、リョーマくんと別れる気ないので」と言ってリョーマくんに駆け寄ると先輩達はブツブツ言いながら反対側に向かって去っていった。