第13章 桜の精?
「夢子ってさ」
「うん?」
「オレの目の中、すごく見るよね」
「うん」
「なんで?」
あ、気付いてなかったんだ。今更言うのも少し恥ずかしいな。
「あ、赤くなった」
思わず顔に手をやるとリョーマくんがクスクス笑った。ああもう、かっこいいなぁ。
「で、なんで?」
「…リョーマくん、中庭の桜の噂、知ってる?」
「…は?」
私の言葉が予想外だったのかリョーマくんの口が開いた。
「だから、桜の噂」
「知らない」
「ふーん、そっか」
都合良くチャイムが鳴り、立ち上がってスカートの裾を引っ張ってプリーツを直した。
「行こ」
まだ「?」な顔をしたリョーマくんに手を差し出すと、逆に引っ張られてリョーマくんの膝に崩れるようにおちた。
「ちょっと、遅刻しちゃ……」
至近距離のリョーマくんに見つめられて、心臓が早鐘を打つ。遅刻さえどうでも良くなりそう。困る。
ゆっくりした動作でついばむ様なキスを何度もすると、頭がぼんやりした。
「好き」
「オレも、好き」
笑い合うだけで胸がいっぱいになる。
大好き。