第13章 桜の精?
「おはよう」
すっかり馴染んだ第二図書室に入るとリョーマくんが眠ってた。
朝練疲れたのかな。
静かに扉を閉めて鍵を締めると、カチンと音がした。
リョーマくんの傍で腰を下ろし、下駄箱に入っていた手紙を見直す。
今日は3枚。呼び出すタイプの手紙ではなかった。
うち1枚は眼鏡を外してから毎日下駄箱の靴の上に堂々と置かれている『整形女』と書かれた手紙。
仮に私が本当に整形していたとして、それを私本人に告発してどうしたいのか分からない。
目的が分からないものは、なんとなく気持ち悪い。
寒気に身を震わせるとリョーマくんが起きた。
「あ、おはよう」
「ん…おはよ」
目をこすりながら起き上がるリョーマくんの頬にファンタを差し出すと、つめたっと言いながら飛び退いた。
「にゃろう…」
リョーマくんが少し意地悪そうな顔になる。
「ふふ、ごめん」
可笑しくて笑いながら謝ると、やだね、と言いながらリョーマくんが私を前から抱きしめて捕まえ、私の首筋にファンタを当てた。
「ふわぁぁっ」
校舎内に入って暖かさに慣れた体温は、よく冷えたファンタに過剰に反応してしまう。
「つっ…つめたぁい〜」
リョーマくんの背中をぱしぱし叩くとようやく解放され、リョーマくんがどうだと腕を組む。
「ごめんって」
まだ笑いが治らない。ふふ。
「朝ごはんは〜…?」
今度はリョーマくんが床をぱしぱしと叩く。
「はいはい、食べよう」
お弁当を広げるとリョーマくんが手紙に気付いて手を伸ばした。
「ああ、それ、みんな飽きないよね」
「この整形女って書いてあるやつだけ、ちょっとキモチワルイ」
「うん、私もそれ気持ち悪いなぁって思ってたとこ」
「こいつだけ見つける?」
「どうやって?」
「乾先輩に頼む」
「なるほど」
ご飯粒を口元に付けたままリョーマくんはぱくぱくとお弁当を食べていく。
手を伸ばすとリョーマくんの動きが止まった。
手を伸ばすのをやめて、近づいて舐めるようにご飯粒を取って戻ると、リョーマくんの顔が真っ赤になっていた。
「ふ…ふふ、リョーマくん、真っ赤」
言い終わるが早いか手首を引き寄せられ顔が近付いた。
キスされるかと思ったけれど、至近距離でリョーマくんは私を見ている。
ほら、瞳の中に私が映っている。
少し揺れて、今度はキスが落ちてきた。