第12章 それでも彼女
好き。ぴったり寄り添う私達を、不二先輩が写真に収めた。
「「それ、絶対ください!」」
リョーマくんと声が重なって笑い転げていると、桃先輩が桃子先輩を荷物みたいに肩に背負って戻ってきた。
「降ろしてよぉ〜」
真っ赤な顔で抵抗する桃子先輩を、桃先輩は軽々抱えている。
「なんだ、持ち方が気に入らないのか?」
桃先輩がニヤリと笑って桃子先輩を肩から降ろすと思いきや、抱え直しお姫様抱っこになった。
「ちょっと、お願い!!本当に恥ずかしい!しぬ!」
顔を見られるのが恥ずかしいようで、桃先輩の肩に顔を埋めたまま桃子先輩は動かない。
そんな桃子先輩を見て、今度は桃先輩の方が慌てる。
「あ、お前、おい、そんなくっつくなよ」
「あんたが抱えたんでしょ!」
抱き合ったまま照れ合う2人がおかしくて、不二先輩がまたシャッターを切った。
「わ〜、撮らないでくださいよ〜」
桃先輩が赤い顔のまま言うから、またリョーマくんと顔を見合わせて笑ってしまった。
「夜野さん、今日は偉かったね」
「不二先輩…私今日は人様に2度も暴力を振るってしまったのですが」
不二先輩がそうなの?なんて言ってクスクス笑う。
ああ、しかも女の子を力一杯叩いてしまった。
「夜野さんのビンタ、痛そうだったね」
「笑顔で言わないでください〜」
「夢子、不二先輩はいつも笑顔だから」
リョーマくんまでクスクス笑う。
「でもリョーマくん、よくあのストーカー容認してたね」
「してないよ」
「えっ」
「月一くらいで告白しに来て、その度に興味ないって断ってた」
「ええっ!?」
そんな熱心なストーカーだったのか。行き過ぎた行為の一部をリョーマくんがさっき言っていたけど、それさえなければリョーマくんのことすごく好きな、普通の女の子なんだろうなぁ。
「夜野さん、さっきの子にちょっと同情してるでしょ」
「えっ」
図星なので驚いた声が出てしまった。
「だって、まぁ、ちょっと行き過ぎた事してたけど、それくらいリョーマくんの事好きだったのかな、と、思っ…て」
言っている途中でリョーマくんがみるみる不機嫌になっていく。
うわ、失言だったかな。ごめん。