第12章 それでも彼女
ひとり残された背の高い女の子は、困った顔のまま固まっていた。
「友達は、選んだほうがイイデスヨ」
話しかけると、そうですね…と小さく言って、更に小声で、すみませんでしたと会釈して行ってしまった。
2人が去ると、リョーマくんが後ろから抱き着いた。
「わ、びっくりした」
立て続けに菊丸先輩が抱きつ…というより飛びかかり、走り寄った桃先輩に頭を撫でられた。
「うわわ」
「夜野やるじゃーん☆」
「お前すげーな!」
「ちょっと、先輩達までひっつかないでよ!」
リョーマくんが迷惑そうに私と菊丸先輩の間で文句を言う。
「フフ…助ける隙もなかったね」
不二先輩がクスクス笑う。手塚先輩も歩み寄り、私の頭をぽんと撫でた。
「お前は本当に織江に似てるな」
ほんの少しだけ口元がほころんでいる。
「ありがとうございます」
「てづかー、それ褒めてんのー?」
菊丸先輩が口を尖らせる。手塚先輩は当たり前だ、と真顔で答えていたけど、菊丸先輩の表情を見る限り織江先輩のツンツンしていた頃を知っているようだ。
「あの、織江先輩も、こういうことあったんでしょうか…?」
菊丸先輩に問いかけると、桃先輩が笑った。
「あいつ、本当に人を、ゴミを見る目で見るからな…部長より強いぞ」
「桃は言い過ぎだけどぉー、まぁ織江ちゃんが1年の時は、迫力あったよね」
4人で団子になって話す私達に桃子先輩が笑いながら言う。
「いつまでくっついてんのー?」
「お、桃子ー、悋気か?」
桃子先輩がみるみる赤くなる。
「ば、ばかじゃないのっ」
桃先輩が私達から離脱して桃子先輩に向かって走る。本気で逃げる桃子先輩。
菊丸先輩が離れ、リョーマくんだけが私を後ろから抱きすくめたまま立っていた。
リョーマくんが耳元で小さく「りんき?」と言った。
そういえば、この前教えなかったんだ。
「やきもちのことだよ」
至近距離のリョーマくんの顔に熱くなる頬。頬と頬が触れると、リョーマくんが顔を押し付け、頬がぴったりついた。
リョーマくんも、熱い。