第12章 それでも彼女
「悪いけど、オレ、本当にアンタに興味ないから、これ以上付きまとわないで」
リョーマくんにそこまで言わせるなんて、どういうことだろう?
「付きまとってなんてない!だって好きなんだもん!諦められないんだもん!」
駄々っ子のように首を振るショートヘアさん。
「オレのジャージの匂い嗅いだり、消しゴム盗んだり、家に来たり、もうしないでほしいんだけど」
えっそれもう犯罪の香りがするよ…
ぽろぽろと泣きながらしゃがみ込む彼女にかける言葉が見つからずおろおろする長身の女の子。
私も何も言えずにいると、ショートヘアさんはお構いなし声を出してえーんと泣きだしてしまった。幼い子供のように泣き出してしまい、私も、桃子先輩も、越前くんも、連れの女の子すら困った顔をしている。
仕方ない、ここにいてもテニス部の迷惑になる。
部室にも丸聞こえだろうし、今更だけど一旦場所を移ろう。ショートヘアさんの腕をとり、立って、と促したけど、振り払われてしまった。
手袋を外して座り込んだ彼女の視線に合わせてしゃがみ込む。
ばちーん。
結構良い音がして、ショートヘアさんが半身に倒れた。
「…え?」
あー、彼女にやられた時の3倍くらいの威力だったかも。でも、もう無理。私昼休みと言い、ちょっとキレやすい若者だったりして?
「いい加減にしてよ。ストーカー女。リョーマくんが先生に訴えなかっただけ有り難く思えば?こんなテニス部の人に迷惑がかかる場所で泣きわめいて、恥ずかしいと思いなさいよ」
まくし立てると呆然とした彼女は、長身の女の子に泣きついた。長身の彼女もストーカー行為は知らなかったようで、少し引いているのが分かった。
長身の女子が言葉をかけないでいると、しびれを切らしたのかショートヘアが立ちあがった。
「それがアンタの本性ね!よくも叩いてくれたわね、絶対に許さないから、傷害で訴えてやる!!」
叫ぶ彼女の声に、レギュラー達が部室から出てきてしまった。ああ、申し訳ない。
「悪いけど、先に叩いたのは貴女だし、私、モデルだから、次の撮影までに腫れが引かなかったり、傷が残ったりしたら事務所から訴えさせてもらうから」
連絡先、もらえる?手を差し出すと、懲りずに彼女は私の手を叩き「許さないから!」と叫んでんで走りだし、あっという間にみえなくなってしまった。