第11章 私
待ちに待った放課後は、お昼休みにいた第二図書室に行かないといけない。
ため息をつくとリョーマくんが私の机の正面に立ち、しゃがみこんだ。机に頬杖を付いてこちらを見る。
周りの目が気になって、どうしたの?とぎこちなく笑うと「行くよ」とリョーマくんが笑った。
クラスメイトの視線を気にしながら、ん、と短く返事をして立ち上がった。
ほら、と手を差し出され、少しためらったけど彼の手を握る。
堀尾くんが目を丸くして私とリョーマくんを見る。
「へ…?お前ら、付き合ってんの!?」
きっとクラスメイト達が聞きたかったであろう質問をためらいなく口にした堀尾くんに、少し笑ってしまう。
「まぁね」
私が答えるより先にリョーマくんがにっと笑って返事をしてしまった。じゃ、と歩き出すリョーマくん。
「ええ!?おい、越前部活は?」
「少し用があるだけだからすぐ行く」
「そーか…」
完全に取り残された空気の堀尾くんと、どよめくクラスメイト達を尻目にリョーマくんについて教室の外へ出た。
一瞬よぎった不安に首を振るとリョーマくんが振り返って覗き込んでいた。
「大丈夫?」
「あ、うん、大丈夫。大丈夫だよ、私、強いから」
リョーマくんが笑う。
「無理やりすぎ」
う…。
「違うの、こういうの初めてだから、なんか緊張してるみたい」
昨日まで2人きりだった世界に他の人が入り込んできたみたいな、変な感じ。
「周りとか関係ないから、俺だけ見てて」
私の心を読むみたいに、リョーマくんは笑って私の髪に触れた。
見慣れたはずなのに、指先に絡めた毛先にキスを落とす姿にはいつも見惚れる。
「うん、ありがとう」
無口だと思い込んでいたから知らなかったけど、リョーマくんは結構ストレートに言葉を遣う。
アメリカナイズ?
手を繋いだまま校内を歩くのも初めてで、なんとなく緊張感がある。
昼休みぶりに第二図書室の前まで行ってノックをすると「どうぞ」と女の子の声がした。
リョーマくんと顔を見合わせる。