第11章 私
唇が触れるだけで気持ちいいなんて、知らなかった。
子供じゃなくなってしまったような不思議な感覚。
リョーマくんの髪に触れる。
つやつやした黒髪はいつも少しだけクセがついていて、もともとストレートヘアの私には少し羨ましい。
指で梳くとさらりと気持ちが良い。
触れるのも触れられるのも、すごく気持ちが良いんだ。知らなかった。
織江先輩は、もう知ってるんだろうな。
手塚先輩の膝で眠りにつく先輩。織江先輩の髪を撫でる手塚先輩の優しい表情を思い出す。
ゆっくりというより、階段を駆け上がるように、私達は大人に向かっていく。