第11章 私
リョーマくんには廊下で待っててもらうことにして、私は扉を開けた。
からからから、と音を立てて扉を開くと女の子が3人。
うちのクラスの派手めなギャルが2人と、知らないギャルが1人。
「ドア、閉めて」
短く言われて、またゆっくり音を立てて扉を閉めた。
近付くと同時に2人に詰め寄られる。
「ねぇねぇねぇ!それいくらかかった!?」
「えっ」
予想外の言葉に困った顔を作ると、彼女達は少しイラついて見せた。
「だからその顔!いくらくらいかかった?親の金?援交?」
「ごめん、話が見えないんだけど…」
見知らぬギャルが私越しにに壁に手をついた。
どんっと音を立てて、彼女との距離が縮まる。
「じゃあ聞き方変えるわ。病院どこ?」
無表情な彼女の言葉でようやく彼女達が、私が美容整形をしていると思っていることが解った。
「ごめんね、私、整形したわけじゃないから」
「はぁ?そんな変わって整形じゃないわけねーだろ?」
「いや、本当に。眼鏡かけて目立たないようにしてただけなの」
ギャルが訝しげに私の顔を覗き込む。
あ、ほら、とポケットから眼鏡を取り出す。かけて笑って見せると、クラスメイトの2人が近付いた。
「あ、ほんとだ、変わってない…」
「んだよ、紛らわしいことしてんじゃねーよ」
ギャルが盛大に舌打ちをして私から離れた。
十分綺麗な顔立ちだけど、眉が薄く眉間のシワが台無しにしていた。
「なんで整形したいの?」
純粋に疑問。
「美人でいる方が楽だから」
端的で良い答えだ。
「そっか。お母さんの知り合いにそういう人いそうだから、分かったら教えようか?」
お母さんのモデルづてでいそうだし。
「ふーん、あんたのお母さん、何者なわけ?」
「元モデル」
「へぇ、じゃあよろしく」
ギャルが可愛らしい名刺を差し出す。
「うん」
クラスメイトはギャルと普通に会話する私を不安げにみている。
じゃあ、また、そのうち、と第二図書室を出ると、リョーマくんが廊下の壁沿いに立っていた。
扉を閉めてから、お待たせ、と言うとリョーマくんは不思議そうな顔をした。
「なんだったの?」
「うーんと、女の子の美容相談?」
「ふーん」
「女の子からの告白じゃなくて安心した?」
覗き込むとリョーマくんが微笑む。
「まぁね」
「私は、安心したよ」