第11章 私
リョーマくんに抱き寄せられ身を任せると、ぎゅう、と抱き締められた。
リョーマくんが肩を震わせた。また笑っている。
「もう、そんなに笑わなくてもいいじゃん」
身体を離して椅子にかけるとリョーマくんはまだにやにやしていた。
「いや、夢子が…強すぎて…」
「親が心配性で、小さい頃から合気道と空手と剣道やってたから…」
「今も?」
「うん、前ほどじゃないけど、たまに道場に行くよ。お月謝払ってるから週に一回は行けって言われてるけど、いまは部活も楽しいしなかなかね」
「これからテニスもやるから、忙しいね」
リョーマくんが笑う。
「うん、もっと上手くなりたいな」
「夢子、これ以上強くなってどうすんの」
正面からはい、と腕を開かれもう一度立ち上がり腕の中に収まる。
「リョーマくんを守ってあげたりとか?」
「オレ、喧嘩ならまあまあ強いよ?」
「そうなの?」
「まあまあね」
「じゃあ、絡まれたら一緒に戦えるね」
「ふ」
リョーマくんが短く笑う。
「ホント、夢子といると退屈しない」
立って抱きしめたまま、リョーマくんが片手で私の髪をふわふわと弄ぶ。
指で梳かれ、さらさらと流れる髪。指の感触が気持ちいい。
リョーマくんの首元が目の前にある。
あ、なんか、すごーくそそられる。
首筋にちゅ、とキスをしてみた。
「んっ」
リョーマくんが慌てたように私の身体を離す。
「あ、ごめん、つい」
「ついって、男じゃないんだから。いきなり欲情しないでよ」
赤い顔を手で覆いながら私を睨む。
「欲情!?してないよ!なんか、キスしたくなっちゃっただけで…」
私まで慌てる。だって、したくなったんだもん。
「それを『欲』って呼ばないで、なんて呼ぶわけ」
呆れた顔でリョーマくんが再度私を抱き寄せた。
唇に、頬に、耳に、首に、キスが落ちる。
「あっ」
敏感な首元にキスされ思わず声が出た。
「あんまり煽んないで、もっとしたくなるから」
「う…うん」
返事をしたけど、気持ち良くてぼんやりする。
ずっとこうしていたい。