第11章 私
「私も、気になるよ」
リョーマくんが顔を上げて不思議そうな表情をした。
「リョーマくんは私と違って、もともと女の子にすごく人気あるし、私と違うような、もっと大人しい可愛らしい感じの子に惹かれちゃったら…どうしよう、とか」
自分で口に出すとますます不安な気持ちが煽られた。
恥ずかしい。
私、まだ暗に竜崎さんのことを不安がっているんだ。
私よりも先にリョーマくんと親しい、可愛らしい女の子。
みっともない嫉妬を露わにしてしまい、本当に恥ずかしい。こんなに好きなんて、なんだか悔しい。
ああもう、強くなろうって決めたのに。
下を向いて唇を噛むと、頬にリョーマくんの手が触れた。
顔を上げるとそのままそっとキスされる。
自己嫌悪に目を合わせられない。
「こっち、見て」
リョーマくんの声に視線を戻すと、その瞳には私が写っていた。
「オレ、夢子しか見てないよ」
「…ん」
歯切れの悪い返事を返してから、瞳を見つめ返した。
「だから…私も同じってこと」
ちゅ、と私からキスをした。
リョーマくんが少し赤くなる。
ああ、そうか、と呟いて私を抱きしめた。
「ごめん」
腕の中で安心と優越感が溶け合う。
「ううん、大丈夫」
迷ったら確かめれば良い。私もリョーマくんも。
背中に手を回すと、腕の力が増した。
どうやっても止められない。この人が好きだ。