第11章 私
下駄箱を開けると手紙が一通。上履きに乗っていた。
なんて古典的。手紙は嫌いじゃない。
リョーマくんに恋に落ちる前なら少しときめいたかもしれないけれど、今はありえない。
上履きを持ち上げると下にもう二通。
なんということでしょう。
とりあえず開かずに手に持って、上履きに履き替え第二図書室へ向かった。
「おはよ〜」
音を立てて扉を開くとリョーマくんが寝転んだまま手をひらひらと振った。
「オハヨ」
今日も素敵。
「何ソレ」
「ん、ああ、ラブレター?」.
リョーマくんがぴくりと反応する。
「なんで疑問系?」
「まだ見てないから」
「ふーん」
一緒に広げると、2枚はラブレター。上に乗っていた1枚は丁寧に封筒に入っているにも関わらず『整形女』と書かれていた。女の子の字に見えるけど、それが事実ではないので私には何の効力もない。
「ラブレター、誰から?」
「誰だろ?知らない人みたい」
「ふーん」
「話したいことがあります。今日の放課後、第二図書室にきてください」
読み上げるとリョーマくんが顔をしかめた。
「オレ、一緒に行くわ」
「うん」
「もう一枚は?」
「えーと、お話があります。昼休みに、屋上にきてください」
またリョーマくんが嫌そうな顔をする。
「それも一緒に行く」
「うん」
ラブレターと解釈したけれど、嫌がらせの可能性もある。
リョーマくんが堂々としてくれるなら、それで充分だ。
「…お腹すいた」
呟くとリョーマくんも、ああ、と言った。
オムライステニスボールを見せると、リョーマくんが微笑んだ。
「器用じゃん」
「えへへ」
褒められて頬が緩む。
2人での朝ごはんが、日常になって、もうすぐ1カ月だ。
カーディガンが意外と早く出来上がりそうだから、誕生日は何か別のプレゼントを贈ろうかな。
「あのさ」
「うん?」
「夢子は、呼び出した奴を好きになったら、どーすんの」
「は?」
デザートのリンゴが口から出そうになり慌てて手で押し込んだ。
「ごめん、言ってる意味が分からない」
「だから「私、リョーマくんが、好きだよ?」
遮って言い切ると、リョーマくんが下を向いた。
「うん、…悪かった、変なこと言って」
「…」