第10章 プレゼント
身体を離してもう一度キスをする。
角の見えなくなるところまで手を振って、家に入った。
「ただいまー」
「おかえり!」
「お父さん、久しぶり」
「おお!本当に眼鏡かけてないな!」
「うん、どうかな、パーマ」
「かわいいぞ!彼氏とはどうなんだ」
「あ、お母さんから聞いたの?」
「ああ、王子様だって?」
お父さんが矢継ぎ早に質問する。
「そう、王子様なの」
「王子様に出会ったから、僕のお姫様は眼鏡の魔法が解けたのかな?」
お父さんの隣に座ると、ポンと頭を撫でられた。
「そうみたい」
照れながらも答えると、お父さんは泣き真似をした。
「お母さん、僕のお姫様はいなくなっちゃったよj
お母さんは料理の手を止めお父さんの頭をポンと撫でた。
「そうねぇ、女の子は大人になるのが早いから…。また女王様と2人になるわね、仲良くしましょ」
腰に手を当てにっこりするお母さん。
「そうだな…今日は送ってもらったのか?」
「うん、すぐそこまで」
「なんだ、寄ってってもらえば良かったのに」
「平日だし、あんまり遅くなったら良くないじゃん」
「まぁ、そうだな」
「そのうち、ちゃんと紹介するよ」
笑顔で話し続ける私にお父さんは優しい目を向ける。
「お父さんよりハンサムか?」
「うん!」
即答してしまいお父さんは少しだけ落ち込んで、お母さんになぐさめられていた。
携帯が震える。電話だ。ディスプレイに表示された彼の名前に頬が緩む。
「もしもし?」
『あ、夢子、オレ』
「うん」
返事をしながらリビングを後にする。お父さんとお母さんがニヤニヤしているから相手がリョーマくんだと分かっているのだろう。
部屋に入りドアをパタン、と音が出るように閉めた。
『さっき帰った』
「ん、おかえりなさい」
『挨拶…した方が良かった?』
リョーマくんが一応、という感じに聞くから可笑しくて笑ってしまった。
「ふふ、大丈夫、いつでも」
『そっか』
リョーマくんの声が聴こえるだけで胸がきゅーんとなる。
『夢子』
「ハイ」
『また明日ね』
「うん」
なんとなく電話を切れずに待ってみる。
『……切らないの?』
「あ、いや。なんか名残惜しくて」
『明日も会えるよ』
顔が熱くなる。
「う、うん、そうだよね」