第10章 プレゼント
何時ものように目覚ましの少し前に目がさめる。
お父さんが既に着替えて朝ごはんを食べていた。
「おはよう」
「ああ、おはよう」
コーヒーを片手に新聞を読むお父さんはなかなか素敵だった。
「お母さんは?」
「まだ寝てる」
「あ、もしかして今日お父さんもお弁当いる?」
「いや、今日は外に出るから大丈夫」
「そっか」
トーストをセットしてエプロンを着けた。
たまにはふざけてみようかな…一時期ハマったキャラ弁の本を開いたけれど、あまりにも可愛過ぎて、すぐ閉じた。
チキンライスを作り薄く焼いた卵で包み、海苔でラインを付ける。ラップを巻いて並べると、ちゃんとテニスボールに見えた。
美味しそう。
「お、テニスボールか、かわいいな、お父さんも食べたい」
「ほんと?もう1個作るから、これ食べていいよ」
「やったー」
オムライスボールを嬉々として食べるお父さんに毒味をさせて、おいしい?と聞いた。
「おいしい!料理も出来る子に育ってくれて、本当に良かった」
「大袈裟だなぁ」
お父さんは、私が眼鏡をやめると言ったから、心配で見に来たんだろう。
「お父さん」
「ん?」
「私、もう大丈夫だから」
お父さんが目を細める。
「……大丈夫じゃなくても、良いんだからな」
「え?」
意味がわからず首を傾げると、お父さんは手の中のオムライスボールを口に放り込んだ。飲み込んでから話し出す。
「お前にはもう王子様がいるんだから、大丈夫じゃなくなったら王子様に言えばいい」
「うん」
図らずも少し涙ぐんでしまい、お父さんは私の頭を撫でた。
「お前が真っ直ぐ育ってくれて嬉しいよ」
「えへへ」
「…夢子、いま、なんじ…?」
「あ、お母さんおはよ…あ!もう行かなきゃ、じゃあまたねお父さん。お母さんも、行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
ほんの少し寝坊したお母さんの小さな悲鳴を背に自転車に跨り漕ぎ出す。
下にはハーフパンツを履いているから、少しくらいスカートがめくれても気にならない。
手は、白いふわふわのミトンで暖かい。
手袋には少し早いけど、早朝と夜はやっぱり少し冷え込むから手袋は本当に嬉しかった。
リョーマくんが選んでくれたということも、すごく嬉しい。