第10章 プレゼント
ピンショットととツーショットに照れながら、不二先輩にお礼を言った。
「いいよ、僕としても、モデルが綺麗だとやっぱり嬉しいからね」
「私もー!私も撮って!不二先輩!」
桃子先輩が桃城先輩に肩車をさせてぶんぶん手を振ったから、みんなで笑い転げた。
織江先輩とツーショットも撮ってもらって、嬉しい1日になった。
「さぁ、冷えるしそろそろ帰るぞ」
手塚先輩のひと声で、みんながはーい、と返事をした。
織江先輩の隣で微笑んだ写真を撮られた手塚先輩は照れているようで、そのあとはずっと仏頂面だった。
みんなでわいわいと帰路に着くと、私も仲間に入れてもらったような気持ちになれて嬉しくなる。
「お疲れ様でしたー」
日が落ちるのがますます早くなって、リョーマくんは少し遅いだけでも送ってくれる。
自転車だから大丈夫、と言っても、自転車の変質者が出たらどーすんの?と言われ素直に送ってもらう。
「夢子」
「うん?なぁに?」
「手、寒くない?」
「うーん、少し寒くなってきたかな?もう冬だもんね」
「これ」
差し出された赤い包みに足を止める。
「えっ」
「あげる、この前見つけて、夢子に似合うと思って」
「開けていいの?」
「うん、今あけて」
「わ、わかった」
リョーマくんが自転車を支えるのを代わってくれて、私は包みを開ける。
時期が時期だからか、クリスマスの柄が入った可愛らしい赤の包み紙をテープから外すと、さらにビニール袋に入ったミトンが出てきた。
「わ、かわいい」
白くてふわふわしたミトン。
ビニールをあけると触り心地が良くて、ずっと触っていたいような気持ちになった。
「着けてもいい?」
嬉しくて嬉しくてリョーマくんに向き直ると、寒さで赤くなった鼻のリョーマくんが「うん」と短く返事をした。
着けてみると内側もふわふわで、中は指先がバラバラに入るようになっていて、ミトン部分は帽子になっていた。ボタンで固定出来る。
「うわ、指先出るやつだぁ!便利!」
「でしょ」
リョーマくんが笑う。
「リョーマくん、ありがとう」
もう一度向き直ってお礼を言うと、リョーマくんが微笑んだ。
「あ!そうだ、私も」
自転車を支えてくれているので、そのままカゴに入ったカバンから完成したマフラーを出した。