第10章 プレゼント
テニスコートをぐるっと一周して部室の裏側のベンチへ。
織江先輩と2人で歩いている時、廊下の窓に映る私たちは姉妹みたいだった。
「桃子先輩、こんにちは!」
見慣れたジャージの後ろ姿に声をかけると織江先輩が振り返った。
「お、部活お疲れ様〜」
桃子先輩が笑顔なので、つられて笑顔になる。
「あ!夜野ちゃん!学校でもメガネやめたんだね!かわいい〜〜」
立て続けに言われて、ふふ、と笑うと桃子先輩が私の髪を触った。
「ほんと、織江とお揃いで、姉妹みたい!似合うね!」
「ありがとうございます」
桃子先輩は人を笑顔にさせる天才だ。
「もうすぐみんな着替えて出てくると思うよ」
「国光、部活間に合った?」
「うん、なんかギリギリだったけど、大丈夫だったよ、織江のせいなの?」
「うん、まぁ、少し?」
「私を見ないでくださいっ」
「何?織江と部長のラブシーンでも見た?」
「見てませんっ」
先輩の頭突きは強烈だったけど…その後、顔を覗き込んだ先輩と手塚先輩はとっても素敵だったな。
「騒がしいぞ」
「うわ、部長、すみません」
「部室に丸聞こえ」
手塚先輩の後ろからリョーマくんが顔を出す。
「あ、お疲れ様」
「うわ、マジに眼鏡してないじゃん!かわいい〜〜☆」
「ちょっと、英二先輩、人の彼女に飛びつかないで!」
菊丸先輩に飛びつかれて驚いたけれど、ふふ、と笑いが漏れてしまう。
「夢子も、なにヘラヘラしてんの」
少し本気で怒った顔をしてリョーマくんがむす、とする。
「菊丸先輩、リョーマくんに怒られますから」
なだめて菊丸先輩をはがすと不二先輩が微笑む。
「写真、撮ってあげようか」
「えっ、マジっすか、欲しいっす」
「え?」
「ホラ、撮ってもらお、不二先輩、夢子だけのやつも欲しいっす!」
「ちょっと、リョーマくん…」
リョーマくんは私の手を引いてコートの前に立つ。
慌ててバッグから手鏡を取り出して前髪をチェックする。
はい、こっち向いて、と不二先輩の声に反応して正面を見ると、カシャ、とシャッター音がした。