第1章 クラスメイト
我に返った頃には授業開始時間を5分程過ぎていて、慌てて教室へ向かった。
教室に戻ると先生は居らず、クラスメイト達は各々控えめに私語をしながら楽しそうにしていた。
数学は自習とのことだった。胸を撫で下ろし席に着き、ふと左に目をやると越前くんが自分の机で突っ伏していたが、こちらをこっそり、といった様子で見ていた。
頰が緩む。
自習用のプリントを始めたが、3分の2ほど解いたところで眠気が訪れた。
教室を見渡すと、不真面目なクラスメイトは睡魔と戦いもせず身を任せている。
飲み物でも買うか。
できるだけ音を立てないよう立ち上がる。
炭酸でも飲めば目も覚めるだろう。
授業中に廊下を出歩くなんてことも、普段は絶対にしないけど、今日はなんだかじっとしていられなかった。
友達がちらりとこちらを見て口パクする。
『トイレ?』
私は小さく頷いて教室を出た。
1階まで降り、自販機へ向かう。
ニットのポケットに手を入れたところで、小銭すら入っていないことを思い出した。
財布、バッグの中だ。
自販機の前で立ち尽くす。
まぁ、歩いて少し眠気も覚めたし良しとするか。
自販機を見たまま一歩後ずさると人にぶつかった。
「きゃっ」
小さく悲鳴をあげ、勢いよく振り返ると越前くんが立っていた。
「越前くん…」
「なにしてんの」
少し怒ったような顔。さっきは甘い空気だったのに、どうしたんだろう。