第1章 Sid~極上の女~
『ローマの休日』。
少し上を行く女性なら誰でも憧れる。
この中に出てくるヘプバーンに
似た格好をして、アヤセが城門にいた。
髪型まで真似できなかったから、
とりあえず緩めのふわふわした三つ編み
を後ろの下の方でまとめて、
バレッタで止めてみた。
「…すいませんが、通すわけには…!」
「だから、予定が変更になったって…!」
「そうは言いましても、
プリンセスお一人を城下に
行かせるわけには…」
なんとなく予想は出来てた。
そうだよね…
普段ならリムジンに乗って、SPつけて
この城門を通るんだもん。
そう思うと初めてここに来た日、
クロードを追って、
よくこの門を一人で通過できたものだ。
そのときだった。
ブォンブォン…
エンジンをふかす音が聞こえた。
真っ赤なスポーツカーが
私の隣で停まる。
乗っていたのは同じように赤い服を来た
アランだった。
「ほら、乗れよ。」
「アラン…」
「逢いに行くんだろ?」
アランが微笑む。
「…うん!」
私が乗り込むとスポーツカーは
かっこいい音を響かせながら王宮を後にした。