第2章 プロローグ
長い眠りから覚めると、彼を取り巻く世界は豹変していました。
正確には変わっていたのは彼が置かれた立場でした。
彼は同じく実験体にされていた一人の友と・・・・脱走をします。
彼は追われる身となります。
しかし彼は希望を捨てることはなかったのです。
自ら犠牲になろうとも、彼は己の誇りを貫き通し・・・夢へと向かいます。
その時、事件を引き起こした英雄は、残酷な世界に背を向け、人の手の届かぬ地へと去りました。
そしてその友は、英雄になりたいと願うのです。
だが友の体は・・・それすらもままならない状態と化していました。だからこそ・・・友は託したのです。
男の意志を引き継いだ彼に・・・・。
彼は苦しかったでしょう。たくさんのことを抱え、そして生きていった。
逃亡中の彼の心は誰にもわからない。
だから、彼が泣いていたのかも、笑っていたのかも、憎んでいたのかも、何もわからない。
ただ一つだけ言えるとしたら、彼は世界に絶望しかけていた。
そんな彼を奮い立たせていたのは・・・・誇りと夢でした。
何度世界に裏切られても、決してそれだけは捨てなかった。
どんな困難に立たされても・・・・彼はそれだけを信じて生きてきた。
そして彼は・・・追手に殺されます。
誰も悪くないんです。
男も、英雄も、彼も、誰ひとりとして悪くないんです。
全員が全員、自分の運命を上手く受け入れることができなかった。
ただそれだけなんです。
彼は一緒に逃げていた友に・・・その夢を託しました。
彼の口癖は
「夢を抱き締めろ。そしてどんな時でも・・・・・
ソルジャーの誇りは手放すな。」
彼は己の悲運ではなく・・・・・友の為に涙を流したのです。
その彼の名前は・・・・・ザックス・フェア。
私の一番の親友でした。