第7章 一人目の闇 ~3~
「バレット…」
ダインは、首に下げていたペンダントを
愛おしそうに首から外すと、バレットへと投げ渡した。
「そのペンダントをマリンに…
エレ…ノアの…
女房の…かたみ…」
バレットは、大きく、何度も頷く。
「わかった…」
そんなバレットを見たダインは、優しい表情で微笑んだ。
そして、夢でも見ているかのような瞳をする。
「…そうか…
マリンが…
もう…
4つ…か……」
ダインが足を引きずりながら向かう先は、暗く大きな口を開けた、谷ぞこ。
「バレット…
マリンを…………泣かせる…な…よ……」
「ダイン……?」
バレットが、ダインの意図を汲み取った時には、遅かった。
「ダイン!」
宙に浮いたダインの体は、重力に導かれながら落ちていく。
その顔は、
穏やかで
落ち着いていて
死に向かう者とは思えないほど
慈愛に満ちた表情をしていた。
バレットはダインの名を叫ぶ。
しかし、それに返事をする者は、もういない。
「……ダイン。おまえと同じなんだ……」
「オレだって……オレの手だって……汚れちまってる……」
バレットの行き場のない叫びは、雲のはれかかった
幻想的な空へと吸い込まれていった。