第7章 一人目の闇 ~3~
何も言うことの出来ないバレットに、苛立ちを示すように、
ダインはそこら中に銃を乱射する。
「それでも聞きたいか?…ならば教えてやろう」
「俺はな、壊してしまいたいんだよ」
「この街の人間を」
「この街のすべてを」
「この世界のすべてを!」
大切なもの全てを、神羅に奪われたのが、この男、ダインなのだろう。
自分の命よりも大切だった物を奪われ、悲しみに飲み込まれた。
そして、
一人だけのうのうと生きている自分自身に対する苛立ちを抱くこととなった。
幸せだっただけに、その闇は計り知れない。
「この世界にはもう何もない。コレル村、エレノア……マリン…」
「マリンは……マリンは生きている」
絶望を嘆くダインの言葉に、バレットは衝撃的な事実を告げた。
ダインの不思議そうな顔に、バレットは続ける。
「あのあと、オレは村にもどった。もう逃げられない…そう思った」
「だからせめて、最後はミーナのそばにいたいと思った」
「そこであの子を……
おまえの娘、マリンを見つけた」
バレットの引き取っているマリンという少女がいる。
彼女は、実はダインの娘だったのだ。
「マリンはミッドガルにいるんだ。一緒に会いに行こう、な?」
僅かに残った希望の光に、すがるような思い。
そんな思いで、バレットはダインを見る。
ダインの口元には、ほんの少し笑みが浮かんだような気がした。
「そうか……生きているのか……」
懐かしむようなダインの柔らかい声音に、バレットは安堵しようとした。
しかし、次に放たれたダインの言葉は、常軌を逸していた。
「わかったよ、バレット。やはりおまえと戦わなくてはならないな」
「なんだと!?」
「エレノアが1人でさみしがってる。マリンも連れて行ってやらないとな」
「ダイン……正気か!?」
言うまでもない、彼は正気ではなかった。
バレットは思う、「もう、ダインと分かり合うことはできないのだろう」と。