第7章 一人目の闇 ~3~
「聞いてくれダイン。おまえに…」
かつてのように、友であったダインへと歩み寄ろうと、バレットは歩を進めた。
が、
耳をつんざくような鋭い銃声が、バレットとダインが、完全に決別したことを表していた。
バレットは、ダインの放たれた銃弾で、先に行くことを阻まれたのだ。
信じられない、といった思いと
やっぱりか、といった諦めにも似た思いが、バレットの胸の中で渦巻く。
そんなバレットに、気づいているのか、気付かないフリをしているのか…
ダインは言葉を紡いだ。
「声が…聞こえるんだ」
突然、脈略のないその言葉に、バレットは動揺を示す。
ダインは、そのまま続ける。
「聞こえるんだよ、エレノアの声が。おねがいだから…バレットをうらまないでってさ」
「だから、あんたを追っかけるのはやめといた…」
エレノア…コレル村での事件の時に、犠牲になったダインの妻のことだ。
芝居がかったような振る舞いをしながら、ダインは悲しみを露わにしていく。
ダインの苦しみを、そのまま表したような言葉に、バレットは項垂れた。
「…自分の愚かさは知っている。許してくれとは言わない」
「でもよ…こんなところで何をしてるんだ?」
「関係ない人間を殺してどうなる? なぜだ?」
自分への戒めの言葉。
それから、自分が正論とでも言いたげな言葉を、立て続けに並べたバレットを、ダインは嘲笑う。
「……なぜ!? 理由を聞いてどうする!?」
興奮しているのだろう、ダインは先程よりもずっと声を荒らげて、言い放った。
「それで殺された人間はなっとくするのか?
神羅の言い分を聞けばコレル村の人間は了解するのか!?」
「理由なんてどうでもいい!」
「与えられるのは銃弾と不条理…
残されるのは絶望と無の世界…
それだけだ!!」
ルイは思う、先ほどバレットの言っていた言葉と、ダインは同じことを言っている、と。
復讐という狂気に取り憑かれた人間。
この男も、悪くはないのに。
完全な悪があれば、きっとこの男たちは苦しまないのだろう。
でも、完全な悪がないままで…
誰が悪いと考えるのは、あまりにも酷なこと。