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A Time to Love  (FFⅦ)

第7章 一人目の闇 ~3~



「マリンだって母さんに会いたがってるだろ?」

それだけ言うと、ダインはバレットへと発泡し始める。
腕で自分をかばいながら、なんとかダインを説き伏せようとする。

「やめろ、ダイン! オレはここで死ぬわけにはいかねえんだ!」

しかし、もうバレットの言葉は、ダインには届かない。

「そうかい。俺はあの日から命はすててるぜ」

「やめてくれ! おまえとはやりたくねえ!」

反撃をしようとしないバレットに、クラウドが声をかける。
だが、バレットは、それを手で制した。

「クラウド、手を出すな! これは、オレの問題だ!!」

バレットなりのけじめだったのだろう。
そして、狂気に取り憑かれてしまったダインを、葬り去ろうといった、友としての最期の役目を果たそうとしたのだろう。

激しい戦いの末、膝をつくことになったのはダインだった。

思うように動かない体を引きずり、ダインは体を壁に預ける。

「……俺はあの時
片腕と……いっしょに」

「かけがえのないものを失った…
どこで……くいちがっちまったのかな…」

誰にもぶつけられない後悔。
それをぶつけることで、ダインは決着をつけようとした。

「ダイン…わからねえよ」

バレットは首を横に振る。

「オレたち…こういうやりかたでしか決着をつけられなかったのか?」

今更になっては後の祭り。
だが、バレットは問わずには居れなかった。


「言ったはずだ……俺は……壊してしまいたかったんだよ……」

「何もかも…… このくるった世界も……俺自身も……」

最後の一言が、ダインの本音。

「マリンは! マリンはどうなるんだ!」

バレットの叫びに、ダインは苦笑する。

「……考えてみろ…バレット…あのときマリンはいくつだった…?」

「いまさら…いまさら俺が出ていったところで あの子には…わかるはずもない…」

「それにな…バレット…」

自分の左手を見つめ、ダインは寂しそうに呟いた。

「マリンを抱いてやるには
俺の手は…少々汚れすぎちまったのさ…」

我が子を抱けないことが、どれだけ辛いのか
本当の子供がいないバレットには、わからなかった。

自分の愛した人が、お腹を痛めて産んだ子。
愛おしくて、可愛くて仕方が無かった子。

もう、ダインには、
そんな子を
抱く資格が残っていなかったのだ。
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